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発表日  : 4月4日(木)

タイトル : 環境負荷低減型情報通信システムの普及方策に関する調査研究〜報告書〜…5






4.まとめ

4−1 テレコミューティングの環境負荷低減効果の評価
1)テレコミューティングの環境負荷特性
 表4に我が国のCO2排出量及び最終エネルギー消費量を示したが、2010
 年のテレコミューティングの広範な普及を想定した社会での、テレコミューテ
 ィングによる環境負荷低減効果の試算結果の合計を、最近(1994年度)の
 値及び今後の見通しと比較すると、次のことがいえる。

 ・エネルギー消費量について、2010年の環境負荷低減効果は、
    最近実績値(1994年度)の  0.42%(ケース1)、1.1% (ケース2)
    2010年度見通しの      0.36%(ケース1)、0.96%(ケース2)
    1994年度から2010年度までの
    年平均増加量の          36% (ケース1)、 98% (ケース2)
    (2010年度の見通しは総合エネルギー調査会の現行施策織込ケースの場合)
    環境への負荷の少ない社会の構築のためには、通常の社会経済活動の
    拡大による環境への負荷の増大を抑制する必要があるが、テレコミュー
    ティングの普及はこの環境への負荷の増大を相当程度抑制することがで
    きる。

 ・CO2排出量について、2010年の環境負荷低減効果は、
    最近実績値(1994年度)の0.39%(ケース1)、1.1%(ケース2)
   に相当する。
    表4 我が国のCO2排出量及び最終エネルギー消費量

CO2排出量
(10`6t−C)
最終エネルギー消費量
(10^19J)
現行施策織込 新規施策追加
1990年度(実績) 302.2 1.352
1994年度(実績) 320.5 1.456
2010年度(見通し)   1.727 1.638
 注1 単位^NはN乗を表します。
 注2 最終エネルギー消費量見通しは、総合エネルギー調査会長期エネルギー
   需給見通し(1994)による。

 また、テレコミューティングの形態別、環境負荷の増減要因別に試算結果をみ
ると、次のことがいえる。

 ・ 全ての想定したテレコミューティング形態について環境負荷低減効果が得
  られる。

 ・ 情報通信ネットワークの利用による環境負荷の増分は、他の環境負荷増加
  要素に比べて小さく、低減要素と比較すれば十分に小さい。TV会議システ
  ムによる出張・業務移動の代替のように大量の映像情報の伝送を想定したケ
  ースにおいても、増分は低減効果よりも1桁以上小さい。

 ・ TV会議システムによる出張、業務移動の代替による環境負荷低減効果が
  相対的に大きい。次いで、在宅勤務の場合に、家庭に比べて1人当たり約2
  倍のエネルギーを消費しているオフィスから家庭に移ることによる環境負荷
  の低減効果が大きい。
   TV会議システムによる出張、業務移動の代替による最終エネルギー消費
  量の低減量、460×10^14J(ケース1)、1,140×10^14
  J(ケース2)は、1994年度の運輸旅客部門の総最終エネルギー消費量
  のそれぞれ約2.1%、約5.2%に相当する。また、在宅勤務により本来
  のオフィスに不在のため低減する最終エネルギー消費量、140×10^1
  4J(ケース1)、540×10^14J(ケース2)は、1994年度の
  事務所・ビルの最終エネルギー消費量のそれぞれ約4.2%、約16%に相
  当する。

  注)^NはN乗を表す。

2)ネットワーク全体の建設、運用面からみた環境負荷
  情報通信ネットワークの環境負荷は、例えば最終エネルギー消費でみると、
 建設段階と運用段階を合わせてみても2.9×10^16J(資料1−1参照)
 であり、これは1994年度の我が国の全最終消費エネルギーの0.2%程度
 である。この情報通信ネットワークを環境負荷低減効果のある様々な情報通信
 システムが共有することを考えると、十分に低環境負荷の社会インフラである
 といえる。
 注)^16は16乗を表す。

4−2 今後の検討課題

1)多様な情報通信システムへの環境負荷低減効果評価手法の適用
  本調査研究では、テレコミューティングに限って環境負荷低減効果を定量的
 に評価したが、環境負荷低減効果の期待されるEDI、CALS等他の多様な
 情報通信の活用形態に関しても、特に、国民生活や事業活動のスタイルの広範
 な変化を伴うものについて、環境負荷低減効果を評価していく必要がある。

2)環境負荷モデルの精緻化

1.本調査研究では、情報通信インフラ、すなわち情報通信ネットワークの環境
 負荷についてLCAの適用を試みたが、今後多様な情報通信システムにこの手
 法を適用するため、複雑なインベントリー、前提条件にも対応できるよう環境
 負荷モデルを精緻化する必要がある。

2.本調査研究においては、対象を日本国内としたが、インターネットなどの普
 及に伴い、国際間の人やモノの移動も通信で代替されることとなろう。この代
 替による環境負荷低減効果について検討を行う必要がある。

4−3 環境負荷低減効果のある情報通信システムの普及促進
 本調査研究の結果を踏まえ、テレコミューティング等環境負荷低減に資する様
々な情報通信システムの普及及び開発を促進していくことが必要である。

1)環境負荷低減効果のある情報通信システムの普及方策

1.産業界においては、環境対応を経営上の最重要課題の一つとして位置づける
 企業が増えつつある。しかし、一般には環境負荷低減効果の認められる情報通
 信システムについても、環境負荷低減効果を保有しているとの認識は十分でな
 い。環境負荷低減効果が認められる情報通信システムについては、環境負荷低
 減の観点から、積極的にその導入を促進すべきであるが、まず、その情報通信
 システムが環境負荷低減効果を有し、企業の環境対応策として有効であること
 の啓蒙が必要である。なお、企業へのその情報通信システムの導入を促進する
 ためには、本来その情報通信システムの持つ生産性の向上、効率化等のメリッ
 トを明らかにしていく必要がある。

2.情報通信の活用による環境負荷低減を実現するためには、併せてその低減効
 果を相殺する要因を抑制する事が重要である。本調査研究で取り上げた在宅勤
 務の普及を例に取ると、在宅による本来のオフィスの環境負荷低減を実現する
 ためには、建物や電気通信機器の増減にきめ細かく応じたエネルギー管理が必
 要になる。こうした配慮の積み重ねが必要である。

3.環境基本計画を受けて平成7年6月に閣議決定された「国の事業者・消費者
 としての環境保全に向けた取組の率先実行計画のための行動計画について」の
 「特に、国は通常の経済活動の主体として占める位置が極めて大きいことから、
 自らがその経済活動に際して環境保全に関する行動を実行することによる環境
 負荷の低減が大きく期待され、また、地方公共団体や事業者、国民の自主的積
 極的な行動を求めるためにも、国自らが率先して実行することの意義は高い。」
 との趣旨を踏まえ、国は環境負荷低減効果のある情報通信システムの導入を率
 先して進め、先進的な事例を多く示す必要がある。

4.米国では、カリフォルニア州の大気汚染防止対策としてのテレコミューティ
 ング実験プロジェクトの実施など、フロリダ、ワシントンなど7州でテレコミ
 ューティングの推進を図る法律が成立した。我が国においてもテレコミューテ
 ィング等の普及のため、制度的な対応及び政策的な支援措置を検討する必要が
 ある。

2)情報通信システムの環境負荷低減効果評価手法の確立
1.本調査研究は、LCAの適用により情報通信システムの環境負荷低減効果の
 計量を行った初めての試みである。今後、国または民間を問わず様々な環境負
 荷低減効果評価手法の開発がさらに進められることにより、情報通信システム
 の環境負荷低減効果の測定における、一般的かつ標準となりうる評価手法を確
 立する必要がある。

2.また、環境負荷低減効果評価手法の確立とともに、企業等が情報通信システ
 ムを導入するに際し、その環境負荷低減効果の観点から情報通信システムを評
 価することが可能となるシステムの確立が期待される。このことは情報通信シ
 ステムを提供する者にとっても、環境負荷低減効果のより高いシステムを開発
 するインセンティブとなることが期待される。



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