発表日 : 4月4日(木)
タイトル : 環境負荷低減型情報通信システムの普及方策に関する調査研究〜報告書〜…3
3.テレコミューティングの環境負荷低減効果
本調査研究では、情報通信により国民生活や事業活動のスタイルが変革された
仮想的社会の一例として2010年における「テレコミューティングが広く普及
した社会」を想定し、その環境負荷低減効果を試算する。
3−1 テレコミューティング
1)定義
テレコミューティングとは、テレコミュニケーション(電気通信)とコミュー
ティング(通勤)を統合した言葉である。取り上げている文献や研究者によって
微妙な違いはあるものの、コンセンサスベースでは、「テレコミューティングと
は、職場までの通勤を電気通信サービスによって部分的もしくは全面的に置き換
えることを意味する」という解釈が最も一般的である。テレコミューティングと
類似した言葉でテレワークという用語があるが、その2つの言葉の関係なども含
め、雇用形態や移動目的、使用する通信機器の面で、いくつかの解釈の違いが存
在するのが現状である。なお、本調査研究では、今回検討する範囲という意味で、
次のようにテレコミューティングを定義する。
被雇用者が、情報通信手段により、通勤、または業務上の移動を代替して
いること
|
上述したとおり、一般的な意味でのテレコミューティングは、代替する交通の
目的を「通勤」に限っているが、ここでは業務目的の移動の代替も含めている。
そこで、本調査研究では、次の4種類の形態を検討の対象とする(図3−1参照)。
図3−1 テレコミューティングの形態
+−−−−−−−−−−−−+
| | +−−−−−−−−−−−+
| 事務所A −−+ ←−−−+ | |
+−−→ || | | サテライトオフィス |
|| +−−−−−−−−+|| | | |
|| | ←−−+ | +−−−−↑−−−−−−+
|| |スポットオフィス|| | |
|+−−| |+ |出張 |通常の勤務
| +−−−↑−−−−+ | |
| +−−−−−−−+ | |
| |出張 | |
| TV会議による | +|−−−−−−|−−−+
| 出張・業務移動の代替 | | |
| +−−−− 自 宅 |
| +−−−−−−−−−−−−+ | |
| | | | +−−−−−−−+ |
+−−→ 事業所B | | | | |
| | | |在 宅 勤 務| |
+−−−−−−−−−−−−+ | | | |
+−+−−−−−−−+−+
1.在宅勤務
自宅にいながら、本来所属する組織のオフィスで実施するような作業を行う
形態。ただし、電話などで内職的な仕事を受注するようなものは除く。
2.サテライトオフィス勤務
自分の所属する部署のヘッドオフィスには勤務せず、別途に設けられたオフ
ィスに通う形態。そのオフィスをサテライトオフィスと呼ぶ。
3.スポットオフィス勤務
所属する組織の構成員が、随時自由に使用できるように、組織の内外に整備
した専用オフィスに通う形態。なお、組織外部の人間がスポットオフィスを利
用する可能性もある。
4.出張・業務移動の代替
TV会議システムを利用することにより、組織内外の別事業所への出張、あ
るいは業務移動を代替する形態。
この形態は一般的な意味でのテレコミューティングの概念には入らないが、
業務交通の一部を代替するという意味で、本調査研究ではテレコミューティン
グの一形態として取り上げる。
2)テレコミューティングの普及想定(2010年)
1.テレコミュータの規模
2010年度におけるテレコミューティングの規模を表3−1のように想定し
た。
本調査研究では、情報通信の活用による国民生活や事業活動のスタイルの大き
な変化による環境負荷低減効果を分析することが目的であるので、想定するテレ
コミュータの規模は、国民生活や事業活動のスタイルが明らかに変化したといい
得る程度に大きく設定した。また、テレコミューティングの規模の大きさ及びそ
の内容の変化による環境負荷の変化を試算で捕らえるため、2つのケースを設定
した。
また、テレコミューティングの規模を、テレコミューティングに参加する人数
(単位:人)ではなく、就業量(単位:人年)で設定したのは、例えば週に1回
在宅勤務を行う場合などを評価対象に量的に含めるためである。
この設定に際し、主に留意した点は次のとおりである。
・2010年の全国の就業者数については、労働省職業安定局編「労働力需給の
長期展望(雇用政策研究会報告)」の見通しに従った。
・テレコミューティングに参加する就業者は、主に情報関連職種(専門的・技術
的職業従事者、管理的職業従事者、事務従事者)の被雇用者が主であるとした。
・ケース1のテレコミューティング就業量、及び在宅勤務者とサテライトオフィ
ス勤務者の割合については、(社)日本サテライトオフィス協会テレワーク人
口調査研究委員会の「日本のテレワーク人口調査研究報告書」の2000年に
おけるテレワーク人口見通しを参考にして想定した。
・ケース2のテレコミューティング就業量は、新たな広帯域・双方向の情報通信
基盤が本格的に普及し、情報通信の利活用が飛躍的に増大しているとして情報
関連職種の就業量の半分弱と想定した。また、ケース1に対し、在宅勤務者の
比率を増加させた。
・2010年の就業者の年間労働時間は、職種によらず年間1,800時間とし
た。
表3−1 テレコミューティングによる就業量の想定
職業別区分
|
全就業量想定
|
テレコミューティング就業量想定
|
ケース1
|
ケース2
|
実数
(万人年)
|
構成比
(%)
|
普及想定
(万人年)
|
実数
(%)
|
普及想定
(万人年)
|
実数
(%)
|
専門的・技術的職業従事者
|
1,113
|
17.6
|
10
|
111
|
30
|
334
|
管理的職業従事者
|
244
|
3.8
|
20
|
49
|
50
|
122
|
事務従事者
|
1,235
|
19.5
|
20
|
247
|
50
|
618
|
販売従事者
|
951
|
15.0
|
1
|
10
|
5
|
48
|
保安職業、サービス職業従事者
|
601
|
9.5
|
0
|
0
|
0
|
0
|
農林漁業作業者
|
237
|
3.7
|
0
|
0
|
0
|
0
|
運輸・通信従事者
|
229
|
3.6
|
1
|
2
|
5
|
11
|
技能工、採掘・製造・建設作業者
及び労務作業者、その他
|
1,728
|
27.3
|
0
|
0
|
0
|
0
|
総数
|
6,338
|
100.0
|
6.6
|
419
|
17.9
|
1,132
|
内、在宅勤務
|
|
35
|
147
|
50
|
566
|
サテライトオフィス勤務
|
|
15
|
63
|
20
|
226
|
スポットオフィス勤務
|
|
50
|
209
|
30
|
340
|
2.テレコミュータの伝送情報量の想定
2010年におけるテレコミュータがどの程度の情報伝送を行うかについて
は、2010年には通信線の末端まで、すなわち各企業、家庭まで光ファイバ
ー化が完了するとの前提の下に、次のように想定した。
(1)在宅・サテライトオフィス・スポットオフィス勤務1人日当たり情報伝送量
a. ファイル転送 1.4MB×8×2枚(電子メールを含む) → 22Mbit
b. TV会議打合 1.5Mbit/s×60分/6人×2/5 →360Mbit
・MPEG1品質のTV会議システムで、週2回6人で会議。
c. 電話 64kbit/s×20分 → 77Mbit
d. FAX 64kbit/s×5分 → 19Mbit
以上を合計し、約60MByte/人日(480Mbit/人日)の情報伝送
があるものと想定した。
ただし、この中には本来のオフィスに居ても使用する通信(例えば顧客へ電話
等)は含めていない。
(2)TV会議システムによる出張、業務交通の代替の場合の情報伝送量
MPEG1品質のTV会議システムを、平成6年度のTV会議利用者に
対するアンケート調査の結果並の頻度で利用すると想定し、1端末当たり
の年間情報伝送量を次のように設定した。
1.5Mbit/s×1405人時間/端末年/2人→3.8×10^
12bit/端末年
(3)TV会議システムの導入量
TV会議システムによる出張・業務交通の代替を考える場合の、TV会
議端末の普及は、テレコミューティング就業量20人年に対し1台の割合
であると想定する。従って、ケース1、ケース2での2010年でのTV
会議システムの普及端末数は、各々20万端末、50万端末となる。