発表日 : 4月22日(月)
タイトル : 「通信・放送融合時代におけるネットワークに関する技術的諸問題」に対する答申
郵政省は、本日、電気通信技術審議会(会長 西澤 潤一 東北大学学長)か
ら、「通信・放送融合時代におけるネットワークに関する技術的諸問題」(平成
6(1994)年6月27日諮問第72号)について、答申を受けました。
本答申では、加入者光ファイバ網の整備の推進及び光ファイバ関連技術の進歩
等により、一本の伝送路で双方向サービスと映像分配サービスを提供することが
できる通信・放送融合ネットワークの構築が可能になることから、円滑かつ効率
的にこれらのネットワークが構築されサービスの提供が図られるように、ネット
ワーク構成の将来展望を行い、ネットワーク構築に必要となる標準化課題及び技
術開発課題を整理し、実現方策等について提言しています。
郵政省としては、本答申を受け、通信・放送分野の標準化における連携の強化
及び総合的な技術開発の推進等の施策を検討し、通信・放送融合ネットワークの
早期実現を図ることとします。
本答申の要点は以下のとおりです。
情報通信サービスは、マルチメディア化及びメディア融合が進んでおり、新た
なサービスへの期待が高まっている。それらのサービスを提供するネットワーク
には、広帯域化、双方向化及びデジタル化などの技術革新が起きている。その結
果、一つの伝送路で双方向サービス(通信系サービス)と映像分配サービス(放
送系サービス)を提供できる通信・放送融合ネットワークの構築が一つの大きな
潮流であり、その円滑かつ効率的な実現に向けて、ネットワークの将来展望と技
術課題の整理を行うことが必要である。
新たな情報通信サービスとしては、例えば、電子新聞、電子出版、遠隔医療、
遠隔教育、ビデオ・オン・デマンド及びホームショッピング等が想定され、これ
らのサービスを実現するためには、広帯域、インタラクティブ、高品質、セキュ
リティ、相互接続性などの機能がネットワークに対して要求されることとなる。
これを技術的指標に置き換えると、伝送速度としてはサービス当たり64kbp
s〜数10Mbps、遅延時間としては25ms以下、誤り率としてはサービス
全体として10^−11以下等の値が一つの目安として考えられる。
注 ^−11は−11乗を表す。
通信・放送融合ネットワークの構成については、通信網及びCATV網の発展
動向及び現在の技術開発動向等から、光・同軸ハイブリッドシステム(HFC)
と網機能のグレード別に3種類のファイバー・ツー・ザ・ホーム(FTTH)の
計4種類の代表的なネットワークが想定される。これらのネットワーク構成は、
経済性及びサービス需要等の諸条件により、導入・普及等の時期が移行(マイグ
レーション)し、発展していくものと考えられる。例えば、光加入者網が全国整
備される2010年以降は、最も高機能のフルATM方式のFTTHが本格普及
することとなるものと想定される。これらの通信・放送融合ネットワークの発展
は、インターネットの高速化及び高度化にも資することとなる。
4 通信・放送融合ネットワークの標準化課題及び技術開発課題
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通信・放送融合ネットワークの標準化に当たっての基本的な考え方は、可能な
限り既存の標準を適用することである。その上で、ATMによる映像分配サービ
スの実現に向けた技術検討及び標準化等の課題については、既存の標準では十分
でないことから、インタフェース等の標準化を推進する必要がある。
また、通信・放送融合ネットワークを構築するためには、光アンプ及び光モジ
ュール等の技術開発による光ファイバシステムの低コスト化、ATM交換機及び
ATMプロトコル等の技術開発によるATM技術の普及、高度映像技術及び情報
コンセント等の技術開発によるユーザニーズの拡大等の技術開発を推進する必要
がある。
通信・放送融合ネットワークの実現のためには、まず、フィールド・トライア
ル等により、通信・放送融合ネットワークで提供するサービス概念を確立する必
要がある。次に、ネットワークの構築に必要な標準化課題について、技術開発と
連携して標準化活動を推進すると同時に、情報交換の場の設定等によりデファク
ト標準への対応を図る必要がある。また、ネットワークの構築にあたっては、中
長期的な展望に基づく総合的な研究開発の推進が必要であり、特に、高度映像技
術及び情報コンセント技術等の情報通信サービスの利用拡大に資する技術につい
ては、早急に研究開発を推進する必要がある。これらの技術課題の解決に加え、
通信・放送融合ネットワークの早期実現のための社会的・制度的環境整備の促進
が期待される。
連絡先:通信政策局技術政策課
電 話:03−3504−4940
用語解説
用 語 | 解 説 |
双方向サービス | 一般利用者間で相互に情報を伝達するサービス。電話やテレビ電話など、主として既存の通信網で提供されている。 |
像分配サービス | 情報提供者が提供する映像情報を、一般利用者に分配するサービス。有線テレビジョン放送など、主として既存のCATV網で提供されている。 |
インタラクティブ | 対話的に種々の操作が行えること。 |
光・同軸ハイブリッド
システム (HFC) | スター状の光ファイバ幹線とツリー状の同軸ケーブル支線から構成されるネットワーク形態。現在のCATV網の幹線部分が光ファイバ化された形態。(Hybrid Fiber Coaxial) |
ファイバー・ツー・
ザ・ホーム
(FTTH) | 各家庭やオフィスまで直接光ファイバを引くネットワーク形態(Fiber To The Home) |
マイグレーション | 通信・放送融合ネットワークの将来展望を、諸条件と時期を含めて示したもの。 |
ATM | 回線交換とパケット交換の両方の特長を持つ非同期転送モード(Asynchronous Transfer Mode)のこと。広帯域ISDNの転送モードとして標準化が進められている。 |
高度映像技術 | 高精細テレビよりも解像度が高い映像を実現するための超高精細映像技術や3次元映像を効率的に伝送するためのの高能率符号化技術など、映像情報の高精細化及び高機能化を図る技術。 |
情報コンセント | FTTHの時代において、宅内のどこからでもマルチメディア情報が利用できるような情報通信端末用のコンセントのこと。ネットワークと円滑にかつ継ぎ目なく接続するための宅内配線技術やプラスチック光ファイバ、光無線等の技術開・ュが必要。 |