発表日 : 3月10日(火)
タイトル : 3/10付:高度情報通信社会の新たな社会ルールの構築に向けて
−「高度情報通信社会に向けた環境整備に関する研究会」報告書−
郵政省では、情報通信の高度化の進展に応じ発生する新たな社会問題について
の分析とその解決のための制度整備の在り方について検討するため、平成9年
(1997年)8月から、「高度情報通信社会に向けた環境整備に関する研究会」
(座長:塩野 宏成蹊大学教授)を開催してきましたが、このたび、その報告書
「高度情報通信社会の新たな社会ルールの構築に向けて」が取りまとめられまし
た。報告書の概要は別紙のとおりです。
また、取りまとめられました報告書について、平成10年(1998年)4
月30日(木)まで、電子メール等により、広く御意見を受け付けることと
しましたので、下記のあて先まで自由に御意見をお寄せ下さい。いただいた御意
見につきましては、今後の行政の参考にさせていただきます。
記
連絡先:通信政策局政策課
(担当:加藤課長補佐、前田係長)
電 話:03−3504−4045
別紙
高度情報通信社会の新たな社会ルールの構築に向けて
−「高度情報通信社会に向けた環境整備に関する研究会」報告書−
I 問題意識:高度情報通信社会の進展と「影」の拡大
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インターネットや移動体通信の爆発的普及などネットワークの高度化により、
「いつでもどこでも誰とでも」コミュニケーションが可能となるとともに、個
人が世界に向けて自由に情報を発信し、また、世界中の情報にアクセスができ
る環境が整いつつある。このようなネットワークの高度化は、電子商取引の実
現など利用者の利便性を飛躍的に向上させる一方で、ネットワークの匿名性、
デジタル情報の改ざんの容易性などの特性を悪用・濫用して、個人情報の漏え
い・改ざん、重要情報への無権限アクセス、わいせつ情報、他人の誹謗中傷情
報など違法・有害な情報発信などネットワークの利用に伴なう「影」の問題を
発生・増大させ、逆に利用者の権利利益や利便性を阻害している。
このような状況の下、高度情報通信社会の健全な発展のためには、ネットワ
ークの悪用・濫用から利用者の権利利益を保護する新たなルールづくりが不可
欠となっている。
II ネットワーク利用環境の現状と今後の制度整備の方向性
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(1)背景・現状
[1]インターネットの利用に係る問題
・誤った情報が広範に流通するおそれ
・アクセス・ログ等が本人の知らない間に収集される可能性
・不正アクセスによる漏えい・改ざんも容易
[2]発信者情報通知サービスの利用に係る問題
発信者番号表示サービスを利用して顧客の発信電話番号等を他の顧
客情報と結合させて顧客データベースを作成することにより、発信者
個人情報が二次利用され、頒布・拡散するのではないかという懸念が
発生
[3]その他情報通信の利用に係る問題
・携帯電話会社による料金不払者情報の信用情報機関への提供
・人材派遣会社等から大量の個人データがネットワーク上に流出した
事件の発生等
(2)今後の制度整備の方向性
[1]法的対応の検討
プライバシー保護に関するOECD8原則をベースに、ネットワー
ク化の進展動向を勘案して、民間部門全体を対象とする法律の整備を
検討することが適当である。
このような法的対応の検討については、政府全体として取り組むこ
とが不可欠であり、内閣の高度情報通信社会推進本部に設置されてい
る「電子商取引等検討部会」において積極的に取り上げるなど、国民
的コンセンサスの形成に向け、関係省庁が連携して検討を進めていく
枠組みを整えることが重要である。
【法制度の主な内容】
ア 個人情報の保護措置
・個人情報の収集に関して本人の事前同意を義務付け、収集目的以外
の利用・提供を原則禁止
・個人情報の正確性の確保措置、漏えい・改ざん・滅失の防止等安全
確保措置に関する努力義務 等
イ 情報主体の権利
自己に関する個人情報についての開示・訂正請求権を創設し、事業
者に対しては原則として開示・訂正の義務を課すこと
ウ 担保措置
法律に違反する不正な個人情報の取扱いを行った事業者に対しては
罰則を適用すること
[2]登録・マーク付与制度の創設
民間の自主的な取組みを促進するため、事業者の個人情報の取扱い
実態や保護措置をマーク付与機関が登録し、登録された事業者が、書
面やWWW上で個人情報保護マークによりその旨の表示を行う制度を
創設することにより、個人情報の適正な保護を行なっている事業者を
利用者が判断する目安とする。
(1)背景・現状
○ 電気通信事業者の研究所のコンピュータ通信網が外部から無権限ア
クセスを受け社内業務情報等が漏洩していた事件の発生
○ 無権限アクセスを手段とする業務妨害、なりすまし詐欺などネット
ワーク利用犯罪が増加
(2)今後の制度整備の方向性
[1]無権限アクセスを処罰する必要性
・技術的に無権限アクセスのすべてに対応することは困難
・諸外国でも何らかの形で無権限アクセスについて法律により規制し、
処罰
[2]法制度整備の具体的方策
ア 情報窃盗、プライバシー侵害の観点から、無権限アクセスによる情
報の窃取を処罰する方法
イ ネットワークの安全・信頼性の保護の観点から、無権限アクセスに
ついて不作為義務を課し、その義務履行確保の手段として刑罰を科す
という方法
上記考え方に基づき、無権限アクセスを規制する法制度整備の在り方
について関係省庁と連携しつつ更に検討を深めていくべきである。
(1)背景・現状
○ 高度な情報通信サービスの実現により、利用者の利便性が向上する
反面、高度な情報通信サービスを理解し、必要に応じた選択をし、利
用することが困難となってきている。
○ 迷惑電話、ジャンク・メールなどサービス利用者間の問題に関する
苦情・相談も少なくない。
(2)今後の制度整備の方向性
[1]郵政大臣による苦情処理体制の法的整備等
料金やサービス提供条件に関する苦情等について、利用者が苦情を
郵政大臣に申し出、適正な措置をとるよう求めることができる制度を
法律化するなどその拡充に努めるべきである。
[2]迷惑通信等利用者間の問題に関する苦情処理・相談体制の検討
利用者間での苦情の解決には、電気通信事業法上「通信の秘密」と
されている発信者情報の開示が前提となるが、
1)受信者は迷惑通信の内容を了知しており、通信内容の秘密を保護
するために発信者情報をも保護すべきという考えは妥当しないこと、
2)発信者のプライバシーについては、受信者の静穏な生活という同
等の価値をもつ利益を害してまで保護すべきものとはいえないこと、
から、迷惑通信から派生する紛争を簡易・迅速に解決するという重要
な利益を実現するために必要な限度において、発信者情報を公正な苦
情対応機関に開示する立法措置をとることが考えられる。
例えば、苦情対応機関において迷惑通信の受信者からの苦情を受け付
け、当該機関が電気通信事業者から発信者情報の開示を含む調査協力を
得、受信者と発信者の利益衡量について弁護士等からなる審査会に諮っ
た上で、発信者情報を受信者に開示するスキームも検討に値すると考え
られ、今後更に検討を進めるべきである。
(1)信頼あるネットワークの提供のための電気通信事業者の役割
[1]ネットワークの安全・信頼性の向上
・「情報通信ネットワーク安全・信頼性基準」の遵守の促進
・インターネットの高信頼化対応技術の活用等
[2]ネットワークの障害・事故等における責任負担の問題
コンピュータネットワークの相互接続により成立するインターネッ
トにおいては、ネットワーク全体の統括者が存在しない。このため、
ネットワークの障害等が原因で伝送される取引データ等が消滅したり、
破壊・改変されてもそれが誰の責任かを特定することは不可能である
ことから、データ不到達等により発生する損害について、取引当事者
とプロバイダー等の電気通信事業者がどのように損害を負担すべきか
について検討を進めていく必要がある。
(2)その他電気通信事業者に期待される役割
・ネットワークを通じて本人確認等を行なう認証サービスの提供
・商品・サービスの広告・宣伝における適正な情報提供の確保