ケーブルテレビ事業参入マニュアル

(1): 有線テレビジョン放送法及び有線電気通信法の概要

①
有線テレビジョン放送法
昭和47年、有線テレビジョン放送の施設の設置・運用及び業務の運営の適正化を図るため、総合的な規律を行う法律として制定された。

有線テレビジョン放送法においては、有線テレビジョン放送の施設の許可、業務の届出等についての規律が定められている。

②
有線電気通信法
有線電気通信に関する基本法であり、有線テレビジョン放送施設を含む一切の有線電気通信設備を規律の対象としたものである。

有線テレビジョン放送法の規律の対象と重複するところが生じるが、重複する点は特別法たる有線テレビジョン放送法が優先して適用され、一般法たる有線電気通信法はそれを補充するものとして適用されることとなる。

具体的には、有線テレビジョン放送法に基づく許可を要しない、引込端子数が500以下の有線テレビジョン放送施設については、本法の規定により、有線電気通信設備を設置し、及び変更しようとする場合に届出の義務がある。また、有線テレビジョン放送施設には本法の技術基準も適用される。
(2): 有線テレビジョン放送法と有線電気通信法に基づくケーブルテレビの手続関係
ケーブルテレビ施設を設置し、これによりケーブルテレビ業務を行おうとする場合は、施設の規模及び業務の形態によって有線テレビジョン放送法（以下「有テレ法」という。）あるいは有線電気通信法（以下「有線法」という。）の規定が適用される。.

これらの関係を整理すると次の表のようになる。

施設の規模施設の面業務の面

有テレ法による設置の許可有線法による設置届

有テレ法による業務開始届等

同一建物内及び同一構内に設置する場合左記以外の場合

501端子以上 ○ × × ○

51端子から500端子まで × × ○ ○

50
端子
以下自主放送を行うもの × × ○ ○

同時再送信のみのもの × × ○ ×

(注)○印は要、×印は不要を表す。

本冊子においては、引込端子数501以上の施設を自ら設置し、その施設により業務を行う場合の手続について主に記載することとするが、その他の場合も含めた法令の適用関係を整理すると以下のとおりとなる。

ア　
ケーブルテレビ施設を設置する場合 (有テレ法第３条)
ケーブルテレビ施設を設置する場合、引込端子数が501以上の場合には郵政大臣の許可を要する。引込端子数が500以下の規模のものであれば、有線法第３条の規定に基づく届出を行えば足りる。

イ　
ケーブルテレビ業務を行う場合 (有テレ法第12条)
ケーブルテレビ業務を行おうとする場合、自ら施設を設置するときだけでなく、空きチャンネルの提供(チャンネルリース)を受けて番組を提供するときも、施設設置の許可・届出とは別に、郵政大臣に対してその業務区域や業務内容等を記載した業務開始の届出が必要である。

ウ
有テレ法の適用除外(有テレ法第31条)
有テレ法は、ケーブルテレビ施設の地域独占性、社会的有用性及び社会的影響力等に着目し、一定の規律を行うために制定されたものであるが、引込端子数が50以下の規模の施設により行われる有線テレビジョン放送（その全てが同時再送信であるものに限る）等、有テレ法第31条（適用除外）各号に掲げるものについては、あえて本法による規律を加えるまでもなく、適用を除外した方がかえって社会的妥当性が見いだされるため、本法の適用除外としている。

エ　
有線法による届出義務の免除（有線法第３条第４項）
引込端子数が500以下のケーブルテレビ施設は、有線法に基づく施設の設置届を設置の工事の開始の日の２週間前までに提出しなければならないが、同一の構内又は同一の建物内に設置される施設等、有線法第3条第４項各号に掲げるものについては、届出義務が免除されている。

(注)○印は要、×印は不要を表す。
施設の規模	施設の面	業務の面
有テレ法による設置の許可	有線法による設置届
有テレ法による業務開始届等
同一建物内及び同一構内に設置する場合	左記以外の場合
501端子以上	○	×	×	○
51端子から500端子まで	×	×	○	○
50 端子以下	自主放送を行うもの	×	×	○	○
同時再送信のみのもの	×	×	○	×

(1): 設置許可の申請(有テレ法第３条)
施設の規模が引込端子数501以上のものであれば、当該施設の設置について郵政大臣の許可を受けるため、有テレ法第３条第２項の規定により、「有線テレビジョン放送施設設置許可申請書」を提出しなければならない。

郵政大臣は、提出された申請書を審査し、有テレ法第4条(許可の基準)の規定に適合していると認めるときは許可をする。

※
「許可の基準」に適合しているかの判断は、「有線テレビジョン放送法関係審査基準」に基づき行われる。

なお、有テレ法第４条第２項の規定により、郵政大臣は、許可申請に対し、許可又は不許可の処分をしようとするときは、関係都道府県の意見を聞かなければならないとされている。
(2): 業務の届出(有テレ法第12条)
ケーブルテレビ施設者の場合は、工事完了後、業務を開始する前に、有テレ法第12条の規定に基づき、有テレ法施行規則第27条に定める「有線テレビジョン放送業務開始届」を提出しなければならない。

ケーブルテレビ施設の空きチャンネルを借りて有線テレビジョン放送を行おうとする者も、業務を開始する前に「有線テレビジョン放送業務開始届」を提出しなければならない。
(3): 役務の料金に関する契約約款の届出(有テレ法第15条)
ケーブルテレビ事業者は、利用者から当該有線テレビジョン放送の役務の提供につき利用料を徴収するときは、あらかじめ当該役務の料金に関し契約約款を定め、郵政大臣に届け出なければならない（引込端子数50以下の施設で同時再送信のみを行うものを除く。）。
(4): 番組の編集(有テレ法第17条)
ケーブルテレビ事業者が自主放送を行う場合、番組基準を定めて公表するとともに、放送番組審議機関を置かなければならない。
(5): 施設の提供義務(有テレ法第９条)
ケーブルテレビ施設者は、有線放送の業務を行おうとする者から業務の用に供するために施設の使用の申し込みを受けたときは、原則として承諾しなければならない。
(6): 役務の提供義務(有テレ法第16条)
ケーブルテレビ事業者は、正当な理由がない限りは、その業務区域における役務の提供を拒んではならないとされている。
(7): 再送信の同意(有テレ法第13条第2項)
ケーブルテレビ事業者は、放送事業者の同意を得なければ、そのテレビジョン放送等を受信し、又は再送信してはならない。ただし、義務再送信を行う場合は除くとされている。なお、著作権者との関係は、著作権法によって規律されることになる。
(8): 道路占用の許可及び電柱添架（共架）の承諾(有テレ法第12条の２、同法施行規則第27条第２項)
ケーブルテレビの業務の届出を行う場合には、道路占用の許可書の写し及び電柱添架の承諾書の写しを届出書に添付することが必要である。

ケーブルテレビ施設の設置に当たり、公道路面上又は公道上空を使用する場合は、道路法の規定によって、当該道路の道路管理者の占用許可が必要である。また、道路において工事又は作業をしようとする場合は、道路交通法の規定によって、当該道路を管轄する警察署長の許可が必要である。さらに、ケーブルテレビ施設が河川横断をする必要がある場谷は、河川法の規定により、河川管理者の許可が必要である。

一方、他人の土地又は電柱の使用に当たっては、その土地又は電柱の所有者から、それぞれ承諾を得る等の手続が必要となる。