電波監理審議会意見の聴取(第360回)意見書(平成13年5月23日開催)
狭帯域デジタル通信方式を用いた市町村のデジタル移動通信システムの導入に係る
無線設備規則(昭和25年電波監理委員会規則第18号)及び特定無線設備の技術基
準適合証明に関する規則(昭和56年郵政省令第37号)の各一部を改正する省令案
並びに周波数割当計画の一部変更案について、電波法第99条の12第1項及び同条
第2項の規定により、意見の聴取を行った(平成13年5月23日)結果、下記のと
おり意見を決定する。
平成13年6月6日
主任審理官 石 田 義 博
記
第1 意 見
省令改正案及び周波数割当計画変更案は適当と認められる。
第2 事実及び争点
1 改正案の内容等
(1) 無線設備規則の一部を改正する省令関係
ア 改正の内容
(ア) 狭帯域デジタル通信方式の無線局に、260MHz帯の周波数の電波を使用
する無線局を追加すること及びこれに係る無線設備の技術的条件を定めること。
(第7条第10項、第57条の3の2及び別表第1号関係)
(イ) 地域防災無線通信を行う無線局の無線設備に係る規定を削ること。(第7条
第11項、第49条の10、第58条、別表第1号及び別表第2号関係)
イ 施行期日
公布の日から施行すること。
(2) 特定無線設備の技術基準適合証明に関する規則の一部を改正する省令関係
ア 改正の内容
地域防災無線通信を行う陸上移動局に使用するための無線設備について、
技術基準適合証明の審査の実施区分から削ること。(別表第3号関係)
イ 施行期日
公布の日から施行すること。
(3) 周波数割当計画の一部変更案関係
ア 改正の内容
狭帯域デジタル通信方式を用いた市町村のデジタル移動通信システムの無線
局に割当可能な周波数の範囲を明らかにすること。
イ 施行期日
公布の日から施行すること。
2 総務省の陳述の大要
本件は、狭帯域デジタル通信方式を用いた市町村のデジタル移動通信システム
の導入に係るものである。
これは、情報化が急速に進展する公共分野において、IPネットワーク等のデ
ジタルネットワークとの親和性が高く多様化する情報ニーズに柔軟に対応できる
高度な移動通信システムが求められ、このような状況を踏まえ、260MHz帯
の周波数帯を利用した「公共分野のデジタル移動通信システムの技術的条件につ
いて」電気通信技術審議会で技術的条件が審議され、昨年11月答申された。
また、総務省消防庁での消防・救急業務用無線のデジタル化の検討結果が出さ
れたことを踏まえ、市町村が当該デジタル移動通信システムを導入するために必
要な規定を整備することに至ったものである。
なお、現在のアナログ方式の地域防災無線通信を行う無線局等は、移動通信用
の周波数がひっ迫している状況を踏まえ周波数の有効利用技術である狭帯域デジ
タル通信方式へ変更し、周波数を260MHz帯で運用されてきた沿岸無線電話
通信の周波数帯が割当可能となったことに伴い分配することとする。
さらにアナログ方式の地域防災無線通信を行う無線局の使用期限は、将来の新
たな周波数使用計画を立てやすくするため、平成23年5月31日までとするこ
ととした。
3 利害関係者の陳述等
本件省令改正案等に関し、下表のとおり、利害関係を有する4者が準備書面を
提出し、このうち3者が意見の聴取の期日に出席して陳述した。また、意見の聴
取の期日に欠席した「社団法人日本農村情報システム協会」については、電波監
理審議会が行う審理及び意見の聴取に関する規則第42条において準用する同規
則第17条の規定により、当該準備書面のとおり陳述したものとみなした。
省令改正案に対する賛否は、次のとおりいずれも賛成である。
利 害 関 係 者 |
賛 否 |
備考 |
全国消防長会 |
賛 成 |
|
財団法人テレコムエンジニアリングセンター |
賛 成 |
|
社団法人電波産業会 |
賛 成 |
|
社団法人日本農村情報システム協会 |
賛 成 |
欠 席 |
第3 理 由
本件は、現在、市町村がアナログ方式で運用している防災行政無線、消防・救急
無線、地域防災無線を260MHz帯を使用して狭帯域デジタル通信方式により実
現するため、関係省令の一部を改正し、あわせて周波数割当計画の一部を変更しよ
うとするものである。
携帯電話、MCA無線等の移動通信は、既に、デジタル通信方式が実用化され、
通信の高度化及び周波数の有効利用が図られている。今般、市町村の移動通信をデ
ジタル化することは多様な通信需要を満たす上で必要な措置と認められる。
現在、公共業務用等に適用される狭帯域デジタル通信方式の技術基準は、150
MHz帯と400MHz帯を使用する無線設備に適用されている。本件は、この技
術基準を中間の周波数帯である260MHz帯に適用するものであり、特段の問題
は認められない。
地域防災無線は、現在、800MHz帯において実用化されているが、普及率が
7%に留まっており、今回の措置により、普及の進んでいる防災行政無線、消防・
救急無線のデジタル化と有機的な連携をもって260MHz帯において整備される
ことが期待される。また、今回の措置により800MHz帯においてより周波数利
用率の高い方式が将来的に導入可能となり、周波数の有効利用に資することになる
ものと認められる。
したがって、800MHz帯の技術基準及び周波数割当を削除することは適当な
措置と認められる。また、800MHz帯の周波数の使用を平成23年5月31日
までとすることについては、無線設備の性能という観点からは、あるいは当該期限
以降も適切な保守により現在の技術基準に適合させて実用に供することは可能かと
も思われるが、法定耐用年数が9年とされていること、800MHz帯の有効利用
が望まれていることを考慮し、また、他の経過措置に照らすと短期間ともいえない
ので、妥当な措置と認められる。
260MHz帯のうち、過去に沿岸無線電話を行う無線局が使用していた262
MHzから266MHzまで及び271MHzから275MHzまでの周波数を公
共業務用のうち狭帯域デジタル移動通信方式に限って割り当てることは、市町村の
防災行政無線、消防・救急無線、地域防災無線が2周波通信方式を採用すること、
800MHz帯における地域防災無線への周波数割当が6MHzに及んでいること
等を勘案すると妥当な措置と認められる。
利害関係者は、すべて賛成している。
以上のことから、本件省令改正案及び周波数割当計画変更案は適当と認められる。