電波監理審議会意見の聴取(第361回)意見書(平成13年5月23日開催)
地上デジタルテレビジョン放送を行う放送局の放送区域を定めることに係る放送局の
開設の根本的基準(昭和25年電波監理委員会規則第21号)の一部を改正する省令案
について、電波法第99条の12第1項の規定により、意見の聴取を行った(平成13
年5月23日)結果、下記のとおり意見を決定する。
平成13年6月6日
主任審理官 石 田 義 博
記
第1 意 見
省令改正案は適当と認められる。
第2 事実及び争点
1 改正案の内容等
放送局の開設の根本的基準の一部を改正する省令関係
(1) 改正の内容
地上デジタルテレビジョン放送の受信が可能となる電界強度の下限値を規定し、
この電界強度を満たす区域を地上デジタルテレビジョン放送を行う放送局の放送
区域とすること。(第2条第11号(3)関係)
(2) 施行期日
公布の日から施行すること。
2 総務省の陳述の大要
本件は、地上デジタルテレビジョン放送の導入に当たり地上デジタルテレビジョン
放送を行う放送局の放送区域を定めるものである。
具体的には、地上デジタルテレビジョン放送の受信が可能となる電界強度の下限値
を、10mの高さにおいて電界強度が1mV/m(60dBμV/m)以上の区域と
し、この電界強度を満たす区域を地上デジタルテレビジョン放送を行う放送局の放送
区域とするものである。
アナログテレビジョン放送では、4mの高さにおいて電界強度が3mV/m(70
dBμV/m)以上の区域を放送区域としていたが、デジタルテレビジョン放送の場
合、雑音に対する信号のレベルがアナログテレビジョン放送に比べて低い値で受信可
能なこと等から、所要電界がアナログテレビジョン放送に比べ、10dB低い値とし
た。
また、アンテナ高については、近年の住宅の受信アンテナ設置位置や国際電気通信
連合無線通信部門(ITU−R)の勧告等を考慮したものである。
なお、4mの高さにおいて受信している視聴者への影響はないよう送信電力の検討
作業を進めているところである。
3 利害関係者の陳述等
本件省令改正案等に関し、下表のとおり、利害関係を有する3者が準備書面を提出
し、このうち2者が意見の聴取の期日に出席して陳述した。また、意見の聴取の期日
に欠席した「日本放送協会」については、電波監理審議会が行う審理及び意見の聴取
に関する規則第42条において準用する同規則第17条の規定により、当該準備書面
のとおり陳述したものとみなした。
省令改正案に対する賛否は、次のとおりいずれも賛成である。
利 害 関 係 者 |
賛 否 |
備考 |
社団法人電波産業会 |
賛 成 |
|
日本放送協会 |
賛 成 |
欠 席 |
社団法人日本民間放送連盟 |
賛 成 |
|
第3 理 由
本件は、地上デジタルテレビジョン放送を行う放送局の放送区域の意義を定めるた
め、放送局の開設の根本的基準の一部を改正するものである。
現在、470MHzから770MHzまでの周波数の電波を使用する地上アナログ
テレビジョン放送を行う放送局の放送区域は、地上4メートルの高さにおける電界強
度が、毎メートル3ミリボルト(70dBμV/m)以上である区域をいうと規定さ
れているところであるが、地上デジタルテレビジョン放送を行う放送局の放送区域に
ついて、平成11年5月の電気通信技術審議会答申「地上デジタルテレビジョン放送
の置局に関する技術的条件」に基づき、地上10メートルの高さにおける電界強度が、
毎メートル1ミリボルト(60dBμV/m)以上である区域をいうと規定しようと
するものである。
上記の答申及びその基となった地上テレビジョン放送等置局技術委員会報告は、所
要の電界強度について、アナログ放送と同じ固定受信モデルを前提とし、受信可能な
時間率をアナログ放送の50%から99%に改善するためのマージンである9dBを
加味した60dBμV/mが適当であるとしている。デジタル放送の場合、所要の電
界強度を下回ると急激に品質が劣化する性質があることを考慮すると適当な配慮がな
されたものと認められる。
また、標準受信アンテナ高について、実際のアンテナの設置高さ別割合をみると5
メートル以下が5.2%と少なくなっていること、国際電気通信連合無線通信部門(
ITU−R)の勧告において10メートルを採用していること等から、標準受信空中
線高を4メートルから10メートルに変更するのが適当であるとしている。電界強度
の計算に用いられる無線局免許手続規則第7条第4項に基づく告示第640号「放送
区域等を計算による電界強度に基づいて定める場合における当該電界強度の算出方法」
によると、地上高4メートルと10メートルにおける電界強度では、前者の方が低く
なるので、地上高4メートルのアンテナで受信している視聴者への配慮が必要である
が、総務省としては、今後の放送用周波数使用計画の策定に当たって、この低下分が
マージンとして含まれるように、原則として空中線電力をアナログ放送の場合の10
分の1(−10dB)に下げるに留めるとしている。
以上のことから総合的に判断すると、放送区域の意義を地上10メートルの高さに
おける電界強度が毎メートル1ミリボルト(60dBμV/m)以上である区域とす
ることは妥当と認められる。また、利害関係者もすべて賛成していることから、本改
正案は適当と認められる。